ウェアラブルデバイスが集める健康データ:将来、保険や雇用に影響する可能性とプライバシー上の注意点
ウェアラブルデバイスは、日々の健康管理や活動記録に役立つ便利なツールとして普及しています。心拍数や歩数、睡眠パターンなど、様々な健康に関するデータを手軽に収集できるため、自身の体調を把握し、より良いライフスタイルを送るための助けとなります。
しかし、これらの健康データは非常に個人的な情報であり、それがどのように収集され、どこに保存され、そして誰が利用する可能性があるのかについては、十分に理解しておく必要があります。特に、将来的にこれらのデータが、例えば保険の加入や雇用といった、個人の社会的な機会に影響を及ぼす可能性についても、冷静に検討しておくことが大切です。
ウェアラブルデバイスが集める健康データとは
ウェアラブルデバイスが収集する健康データは多岐にわたります。代表的なものとしては、以下のようなデータが挙げられます。
- 活動量: 歩数、移動距離、消費カロリーなど
- 心拍数: 安静時心拍数、運動中の心拍数など
- 睡眠: 睡眠時間、睡眠の深さ、目覚めの回数など
- 運動: 運動の種類、時間、強度、GPSによるルート記録など
- その他の生体情報: 血中酸素濃度、心電図(一部デバイス)、体温など
これらのデータはデバイス本体に一時的に保存された後、連携するスマートフォンのアプリを経由して、デバイスメーカーのクラウドサービスに送信・蓄積されるのが一般的です。
あなたの健康データはどのように利用される可能性があるか
ウェアラブルデバイスのメーカーやサービス提供者は、利用者の同意に基づき、収集したデータを様々な目的で利用します。主な利用目的は、サービスの提供や改善、統計データの作成などです。
しかし、プライバシーポリシーをよく確認しないまま利用を続けると、想定していなかったデータの利用や第三者への提供が行われる可能性もゼロではありません。特に注意すべき点は以下の通りです。
- データ収集の種類: どのような種類のデータが収集されているのか。単なる歩数だけでなく、より詳細な健康情報(心拍変動や睡眠の質など)が含まれていないか。
- データの利用目的: 収集されたデータがどのような目的で利用されるのか。「サービスの改善」だけでなく、「研究開発」や「マーケティング」といった目的が含まれていないか。
- 第三者への提供: 収集されたデータが、デバイスメーカーやサービス提供者以外の第三者(広告主、提携企業、研究機関など)に提供される可能性があるか。提供される場合、どのようなデータが、どのような目的で提供されるのか。
これらの内容は、デバイスやサービスごとに定められているプライバシーポリシーに記載されています。難解な法律用語が多く読みにくいと感じるかもしれませんが、上記の3つのポイントだけでも確認するように心がけることで、データがどのように扱われるのかの概要を把握できます。
健康データが将来、保険や雇用に影響する可能性
現在、ウェアラブルデバイスで収集された個人の健康データが、直接的に日本の保険加入の可否や保険料、あるいは雇用の判断材料として広く使われているわけではありません。しかし、技術の進歩やデータ活用の流れ、そして法規制の動向によっては、将来的にその影響が大きくなる可能性は考慮しておくべきでしょう。
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保険への影響: 生命保険や医療保険では、契約者の健康状態や喫煙習慣などが保険料や加入の条件に影響することがあります。将来的には、ウェアラブルデバイスによって継続的に収集された健康データが、個人の健康リスクをより詳細に評価するための補助的な情報として利用される可能性が考えられます。例えば、活動量が極端に少ない、睡眠パターンに問題があるといったデータが、特定の健康リスクを示唆すると判断される場合などが考えられます。ただし、このような利用には高度な倫理的配慮と厳格な法規制が必要となります。プライバシーポリシーで、保険会社などの第三者へのデータ提供の可能性について明記されていないか確認することが重要です。
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雇用への影響: 企業が従業員の健康状態を把握することは、安全配慮義務の観点から一定程度必要ですが、個人的な健康情報を詳細に把握し、それが人事評価や雇用の継続に影響することは、プライバシー保護の観点から大きな問題となります。ウェアラブルデバイスによって収集された日常的な健康データ(活動レベル、ストレス指標など)を企業が取得し、勤務態度や健康状態の評価に利用しようとする試みは、現時点では倫理的・法的に非常にハードルが高いと言えます。しかし、健康経営の推進などの名目で、データ提供への同意を求められる可能性も将来的にはゼロではありません。企業が従業員のウェアラブルデータを取得・利用する際のルールや同意の範囲について、事前に確認することが非常に重要です。
ユーザーができる対策と注意点
ウェアラブルデバイスの便利さを享受しつつ、将来的なプライバシーリスクを最小限に抑えるために、ユーザー自身ができるいくつかの対策があります。
- プライバシーポリシーの重要ポイントを確認する: 利用開始前に、データ収集の種類、利用目的、そして「第三者への提供」に関する項目だけでも確認しましょう。理解できない点があれば、メーカーのサポートに問い合わせることも検討してください。
- データ共有設定を見直す: デバイスや連携アプリの設定には、他のアプリやサービスとのデータ連携を許可するかどうかの項目があります。必要最小限の連携にとどめ、不要なデータ共有はオフに設定しましょう。
- 不要なデータは削除する: サービスによっては、蓄積されたデータを自分で確認したり、一部を削除したりする機能が提供されています。長期にわたって必要のない古いデータは、定期的に整理することも検討できます。
- 信頼できるメーカーを選ぶ: プライバシー保護に対する考え方や、過去のデータ取り扱いに関する評判なども、デバイス選びの一つの基準とすることができます。
- データが「自分のものである」という意識を持つ: 収集されるデータは、あなたの体から得られた非常に個人的な情報です。その情報がどのように利用される可能性があるのかを常に意識し、安易な同意や設定変更は避けるようにしましょう。
まとめ
ウェアラブルデバイスが収集する健康データは、私たちの健康管理に役立つ一方で、そのプライバシー上のリスク、特に将来的に保険や雇用といった社会的な側面に影響を及ぼす可能性についても理解しておく必要があります。
現状、直接的な影響は限定的ですが、技術の進歩とともにデータ活用の範囲が広がる可能性は十分に考えられます。デバイスを選ぶ際や利用を開始する際には、プライバシーポリシーの重要なポイントを確認し、データ共有の設定を適切に行うなど、ご自身のデータを守るための意識と行動が重要になります。賢くウェアラブルデバイスを利用し、そのメリットを享受しながらも、大切なプライバシー情報をしっかりと管理していくことが求められています。